• ホーム
  • ブログ
  • 太陽光パネルと牛!?アーティスト電力の新たな取り組み
プロジェクト

太陽光パネルと牛!?アーティスト電力の新たな取り組み

INDEX

矢吹町で太陽光×放牧


福島県矢吹町。豊かな農作物に恵まれる福島県南部の町です。この地には、音楽シーンで活躍するシアターブルック 佐藤タイジさんの「太陽のタイジ発電所」や、ACIDMAN Vo,G の大木伸夫さんの「大木伸夫発電所」などアーティスト電力の発電所があります。

この発電所では、高架に設置したソーラーパネルに隙間をつくり、農作を可能にする「ソーラーシェアリング」を採用しています。今年が初めての農作となり、牧草の生育とその牧草を食べて育つ肉牛の放牧が始まりました。

牛にストレスをかけない畜産


雨もパラつくあいにくの空模様のこの日、放牧の様子を見るべく矢吹町に伺いました。広大な敷地にはびっしりと牧草が育っていました。

▲すくすく育つ牧草


長い間、耕作放棄地だったというこの場所。牧草を植えるのは、地力を高めるのが目的だそうです。この広々とした空間で牛が自由に生活しています。

▲牛は自由で快適な環境で育つ


牛の飼育を担当するのは、株式会社アグロエコロジー。ソーラーシェアリングなどを活用した持続可能な農業や、家畜を快適な環境下で飼養するアニマルウェルフェアを推進する企業です。


畜産では効率化の観点から狭い場所で多頭飼育を行うことがあります。この方法では、牛一頭一頭を見る個体管理ではなく、群れ全体で見る群管理という方法がとられ、管理しやすくするために遺伝的な同一性を持たせることもあります。そのため過密・閉鎖環境のストレスや、同一遺伝子ゆえの脆弱性などから感染症にかかりやすくなる事例も見られます。

感染症の発生は、殺菌・消毒やワクチン、抗生剤の多用など畜産農家のコスト増となるだけでなく、畜産動物にもさらなるストレスを与える結果となります。

アニマルウェルフェアの考え方は、こうした状況を改善するために生まれました。動物にできるだけストレスを与えず、自然に近い環境で飼育することで、免疫力を高め、安全で美味しい生産物の提供を目指します。

自由で豊かな表情を見せる牛たち


この発電所では、アニマルウェルフェアを実践しています。牛たちは自由に生活し、管理も最小限です。牛たちは好きなときに食べ、休み、遊ぶことができ、その様子は非常に穏やかでした。

担当者にお話しを聞きました


株式会社アグロエコロジーで放牧を担当している遠藤さんに、この取り組みについて伺いました。



ーなぜ放牧を行うことにしたのですか?

この土地は、10年以上も農業が行われていない耕作放棄地です。今回UPDATERさんのサービスである「みんな大地」による土壌診断も行われますが、農作物を育てる「地力」が落ちているのではないかと考えています。

そこで比較的荒れた土地でも育つ牧草を育てることにしました。牧草をそのまま放牧に使うことで、より有意義に土地を活用しようと考えました。牛が生活することで牛の糞尿が土地を潤し、地力の回復に役立つことも期待しています。

▲みんな大地による土壌採取


ーソーラーシェアリングの下で行うことでなにか違いはありましたか?

ソーラーパネルの設置で日光が遮られることを心配する方もいますが、牧草を含め農作物の生育には全く問題ありません。むしろ近年は酷暑が続き、日光を遮ることで畑の気温を下げる働きもあります。まだ初年度なので、この土地ではどうなるかはわかりませんが、今年は他の農作地でソーラーシェアリングにより生産量が上がったという事例もありました。適度な日陰があることで、牧草の生育に好影響があれば良いなと思っています。

▲パネルには適度な隙間がある


ー今後、この取り組みをどのようにしていきたいですか?

「みんな大地」の結果も見てみたいと思いますが、2~3年は牧草を植えて地力の回復を図りたいと考えています。その間は牛の放牧も続けて肉質や体調など牛への効果というのも検証したいです。十分に地力が回復したら、比較的地力の弱いところでも育つ大豆などから植え始めて農地としてどんどん豊かにしていきます。

終わりに


今回の取り組みは、アニマルウェルフェア、脱炭素、土壌の生物多様性とサステナブルな要素が相互に機能しあっていると感じました。自然と動物の力を借りて地力を回復していく取り組み。土壌改善の結果も含めてまた皆さんにお伝えしたいと思います。

また、とにかく暑いので日陰が牛の生育も助けるのではないかと思います。雨の日は、牛が太陽光パネルの下で雨宿りをしている様子も見るので、発電以外の用途でもメリットがあると感じています。
WRITER
豊島翔
共創・コミュニケーション部
豊島翔

新卒で入社した観光施設で広報に配属される。それ以来、広報の魅力に取り憑かれいくつかの業界で広報を担当。広報の持つ社会変容の機能を生かして、世界を今より良い方向へ変えていきたいという想いで2024年4月よりUPDATERにジョイン。常に動いていないと死んでしまうタイプ。