竹の需要と供給を考える
INDEX
その工務店は竹で溢れている。
モデルハウスには、竹箸、竹皿、竹ざる。お湯は竹ボイラーで沸かし、ドライヤー置き場も竹製。社員は竹炭の歯磨き粉を作り、竹炭石鹸、竹のクリスマスツリー、畑には竹炭の肥料が撒かれ、家を建てたオーナーには猫トイレ用の竹チップを配る。
長野県に本社を置く株式会社アトリエDEFは、自然素材にこだわり、自然を愛し、守り、自然と一緒に循環する暮らしを提案する工務店だ。建築素材の中で一番大量に使う木にもこだわり抜き、建てる前も後も考えられた国産の木材を使う。建てる前、つまり森林の状態の木と向き合い日本の山を守る活動をする中で、竹林が広がることによる林業の被害を目の当たりにしてきた。
竹害をなんとかしようと筆頭に立ってプロジェクトを立ち上げ、竹のことを考えすぎて何屋さんかわからなくなってきている大井社長に案内され、八ヶ岳の民家の横にある竹林整備を体験してきた。
まず目に入ったのは、12月のツンと透き通った青い空をバックに、風に揺れる竹林。日本人であれば誰しも竹林にはポジティブな感情を抱くのではないだろうか。あらかじめアトリエDEFの社員によって間引かれた竹林は、光が差し、向こうに青空がかすかに透けて美しい。
しかし少し右に目をやると、枯れ竹が斜めに乱立して鬱蒼とした竹林があった。今日はここの竹を間引くお手伝い。
作業に使うのは竹用のノコギリだ。20cmくらいの小型のもので、小学生でも扱える。
年を取った竹(節が黒っぽくなっているので見分けられる)を選んでノコギリで切る。切る作業自体は一瞬で終わる。ゆっくり切っても1分もかからない。斜面にある竹林のため、切ったら下の作業場まで引っ張って運んでいき、そこで葉っぱのたくさんついた細い上部と、太い下部に切り分ける。
太い部分についた枝と葉っぱを切り分け、細い部分と一緒に竹専用のチッパーに投入する。
細かくなった竹チップは畑に撒いたり、固めて猫トイレ用の砂になったりする。
残る太い部分は軽トラに乗る長さに切り、積んでいく。竹林整備初心者がメインで10人、2時間弱で軽トラの荷台にいっぱいになったが、間引きできた面積は竹林全体から見ると猫の額ほどだった。
そのトラックと一緒に別の作業場に移動し、竹炭を作った。まずは竹が破裂しないように短く切ってから空洞がなくなるように縦に割り、大人が三人くらい入れそうな大きな釜に入れて燃やす。
蓋をして隙間を土でふさいだら、そのまま放置すると竹炭になる。
竹を縦に割る作業はとても気持ちが良い。ナタを置いて木槌で叩くだけでスパーンと割れる。4つ割り用の器具もあり、これも子供が参加できる作業だ。
出来上がった竹炭は、畑に撒いて使える。CO2を勢いよく吸って成長した竹を炭にして畑に撒くことで、炭素を土に固定できる。他にも石鹸や磨き粉にしたり、食べれば便秘にも効果的な可能性があるとのこと。
作業後は、竹製品でいっぱいのモデルハウスで竹害について学んだ。地下茎でクローンをつくり、森林に入り込んで占拠したり、家を壊すほどの竹の勢いについて。高齢化で竹林を整備する人が居なくなったこと。50年で育つ杉に比べ、竹は5年で同じ大きさになってしまうことなどを教えていただいた。
次の日は竹ワークショップ。門松やコップ、笛など好きなものを作った。加工がしやすいので短時間で色々作れて楽しい。
昔はこうやって竹で色々作って消費していたのだ。竹取翁は竹でよろずのものを作って生活していたし、筍も中国産ではなく近所で採れたものを食べていた。竹馬も水筒もおもちゃもざるもカゴも、なんでも竹で作れるのだ。竹は水に強いが基本は消耗品なので、一定の需要が常にあった。もちろん燃えるのでゴミも出ない。一緒に参加した社員の出身地である大分県にはまだ竹職人がいるが、竹職人を育てる学校は日本でも大分県だけになってしまったそうだ。日本で売られている竹製品は、腕の良い職人が沢山いるバリ島などのものが多い。
竹は悪者ではなく昔から日本にあって、需要と供給のバランスをうまく取って付き合ってきた。それが使われなくなって増えただけだ。竹のざるで手打ちのお蕎麦を食べながら、日本で供給に見合うくらい竹を消費するにはどうすればいいのか話し合った。
「ワークショップも良いが、大量に消費するにはどうすればよいのか」
「竹ポテチは作れそう」
「竹リコを提案したけど難しそうだった」
「47都道府県がそれぞれ竹の特産品を作って競えば良いかも」
「竹もみじ饅頭とか、竹の恋人とか」
「竹アートで地域コミュニティを活性化できるかも」
「竹で高級品を作って六本木ヒルズで売る」
「竹チョコ食べたい」
「武豊さんに竹馬に乗ってもらい、竹競馬をする」
「胴元は私にやらせてください」
「やはり畑で使うのが一番消費する。作物に与える影響を実験中なので農家さんに広げたい」
「プレイパークで遊ぶ材料として子供に竹を提供する」
「いろんな企業に竹林整備体験をしてもらおう」
「かぐや姫探しゲームをしたい」
「かぐや姫を隠すのが大変そう」
「竹ペーパーは?」
「やっているところはあるが、儲かるようにするのは大変らしい」
「竹でダンベル作れないかな」
「・・・?」
みなさんは、どんなアイデアが湧いてくるだろうか。
竹を使うアイデアを募集中です。
TADORi たのしく竹林プロジェクトまで。
https://updater-blockchain.jp/bambooproject
WRITER
システムエンジニア|みんなリビングの人
なかじょん
2018年、面白いことをやらせてくれそうなみんな電力株式会社(現:株式会社UPDATER)に入社し、電気料金を病的なまでに透明化した「超明細」を開発。2022年に日本の山を透明化すべく、木を選べる世界を目指す「みんなリビング」事業を立ち上げ。