ビーチクリーン体験レポート〜プラスチックはどこまでも〜
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寒い。なんか想像と違う・・・
茅ヶ崎の海岸。電力顧客である工務店さん(株式会社アトリエデフ)の湘南オフィスの方々に誘われてビーチクリーン活動に参加した。
ビーチクリーン⇨ゴミ拾い⇨歩き回る
というイメージだったため、当日風が強めの予報でも「動いたら汗をかくだろうな」と考えていた。実際、薄陽が射す中で、駐車場からの移動だけで体は暖かくなっていた。やっぱりなと、上着を脱いで説明を聞いた。
最初に渡されたのはハガキサイズの小さい袋。拾うのは砂に紛れた小さなプラスチックだ。
綺麗に日焼けした海の男、小島常務から説明を受ける。
「ビーチクリーンついでにビーチグラスを見つけてこの袋に入れて持っていくとサービスしてくれるお店もあるんです」
ほー
「終わったら七輪で魚でも食べましょう」
イェイ♪
「1,2mmの小さな物が多いので軍手はしないほうが拾いやすいです。」
へー
「一度始めると動けなくなりますよ」
へ?
「じゃぁこのへんから始めましょうか」
そこで何気なく歩いていた砂浜に目を落とすと、とってもカラフル。「ちょっときれい」と思いつつ、赤や緑やピンクの小さなプラスチックを拾い始めた。この赤いのはおもちゃのかけらかな?黄色いのはコップの淵?ほとんどが小さすぎて何の破片かわからない。唯一特定できたのは緑のプラスチックで、人工芝の破片。大量にあり、細くて薄いので砂と分けるのが少し大変。作業前に教えていただいた、原料チップらしき半透明のプラスチックも大量に落ちている。教えられていなかったら砂と見分けがつかない。
そんなふうに素手で夢中で拾っているうちに気づく。寒い。一度座り込むと、目に見える範囲だけでも大量のプラスチックの破片が落ちている。大体終わったと思って視界を少し移動すると同じ状態。確かに動けない。じっと座り込む体に12月の海風が吹き付ける。寒いので上着を取りに荷物置き場に戻ったが、その間に歩く砂浜も全てカラフル。気になって仕方がない。捨てられたライターがやたらと大きく見える。
結局30分間の作業の中で、最初に始めた場所から5歩ほどしか移動しなかった。
一人で集められたプラスチックはハガキサイズの袋の半分ほど。
一緒に拾っていた上司の元には犬の散歩中の女性が来て、「私も拾ったの、一緒に集めて」と一掴みのプラスチックごみを渡されたそう。地元の人も気にかけているのだ。
しかし、目の前に広がる砂浜はあまりに広く、紛れ込んだプラスチックは途方もない数だ。
砂と同じ色で紛れているものや、目に見えないマイクロプラスチックも含めたらどれだけのものかと思うと、想像力がリミットを超えて海の中をゆらゆら漂う昆布のような気分になった。昆布の目には、1日にどれだけのプラスチックが見えるのだろうか。
寒いので七輪の魚もほどほどに、湘南オフィスに移動。
あたたかくておいしいお昼ご飯をいただいたあと、各々が拾ったプラスチックを広げてひとしきり披露しあう。そのあと、リンゴを齧りながら色別に仕分けを始めた。ピンセットで赤系、青系、緑系、黄色系、と分けていく。
ごみのプラスチックは出どころが様々なため、融点もバラバラで再利用は難しいそうだ。色別に分けておくと綺麗だし、プラスチックゴミを使うアーティストもいるらしい。
ひたすらピンセットでつまみながら、どうすれば一気に大量のプラスチックゴミを集められるかアイデアが出てきた。
「水に入れて浮いたものを回収するという方法もある」
「色で選別する機械があるのでは?」
「集めて熱すればプラスチックだけ溶けるかも」
「たとえ一掃してもまたすぐにゴミでいっぱいになるんだろうね」
クラウドファンディングで海洋ゴミを回収する装置を作った会社もある。その会社の今の目標は、太陽光エネルギーでその装置を動かし、集めたプラスチックごみの再利用でその装置を作ること。最終目標は、「この装置がいらない世界」。うなずくしかない。
集めたプラスチックのカケラたち。色別にすると確かに美しい。小洒落た小瓶なんかにいれるとなお良い。
帰社してオフィスのエントランスに飾り、社員全員が見るLINEに投稿すると「きれい」という声ではなく、悲しい顔のスタンプや「大変だったでしょう、お疲れ様」の声が多い。やはりUPDATER社員、意識が高い。
海洋ごみは近年増えていて、2050年には海中の魚の全重量より多くなるそうだ。
人体にもすでに大量のプラスチックが取り込まれていることがわかっている。その量、なんと1週間にクレジットカード1枚分だそうだ。今日私が拾った分くらいだろうか。
体内のプラスチックの流入経路は詳しく分かっていない。マイクロプラスチックを食べた魚からはもちろん、ガムの包み紙、その他プラスチック包装の食べ物、埃を吸い込む、ウォーターサーバ・・・いたる所に存在するプラスチック、いたる所で体内に取り込まれているらしい。大きさによっては血液中や、リンパに入り込んでいる。胎盤を通して生まれる前の胎児にまで取り込まれている。
海の中のマイクロプラスチックでさえ想像を超えていたのに、空気中や水、体内にまであると考えるとさらに放心してしまう。プラスチック製品の存在しない家はあるのだろうか。もはや手遅れなのではと思いつつ、何かできることはないだろうかと考える。毎週クレジットカード1枚分をみんなが拾う法律ができれば±0かも、巨大な下敷きで静電気を起こして吸いつけよう、などと空想する。
まずは、お店で買おうと思ったものがプラスチック以外で代替できないものか、考えるところから始めてみようと心に決めた。
WRITER
システムエンジニア|みんなリビングの人
なかじょん
2018年、面白いことをやらせてくれそうなみんな電力株式会社(現:株式会社UPDATER)に入社し、電気料金を病的なまでに透明化した「超明細」を開発。2022年に日本の山を透明化すべく、木を選べる世界を目指す「みんなリビング」事業を立ち上げ。